よくなおる不妊鍼灸~抗精子抗体(ASA)の患者さんが鍼灸治療で自然妊娠した症例
抗精子抗体(anti-sperm antibody:以下ASA)の患者さんが経絡治療によって自然妊娠することができた症例を報告させていただきます。
ASAとは
精子をアレルギー(外敵)と誤認して攻撃してしまう自己免疫疾患です。
症例
☑患者 40歳代女性。
☑初診 2017年。
☑随伴症状
- 疲れやすい。
- ぐっすり寝ても眠たい。
- 肩こり。
- 股関節痛。
- 側彎。
- 手足の冷え(冬には霜焼け)。
- 花粉症。
- 蓄膿。
- 胃腸が弱い。
- 下痢しやすい(渋り便)。
- イボ痔。
☑脉状診 浮、数、虚、緊。
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑病症の経絡的弁別
- 疲れやすい、ぐっすり寝ても眠たい(肝は罷極の本。罷極とは疲労に関係すること。)。股関節痛、手足の冷え(肝は四極の本。四極とは四肢のこと。)、花粉症(疏泄大過)は肝木経の変動。
- 側彎(腎は骨髄を主る)、下痢しやすい(渋り便。腎は二陰を主り、二陰とは生殖器と肛門で、下痢には痢病と泄瀉があり渋り腹は痢病で腎虚。別名裏急後重。)は腎水経の変動。
- 肩こり(肺は臓腑の華蓋で五臓の最上に位置し肩は天の部である。)、蓄膿(鼻は肺の外候)、イボ痔(肛門を魄門という。魄は肺に宿る神気。)は肺金経の変動。
- 胃腸が弱い(脾は運化すなわち消化吸収排泄を主る。)のは脾土経の変動。
☑証決定 以上を総合的に判断して肝虚陽虚証とした。
☑適応側の判定 病症に偏りなく女性であるため右とした。また右足の三陰三陽は気の栓を閉め、気を上昇させ、気血を興奮させる作用がある。
☑用鍼の選択 気に敏感な患者のため、刺さない鍼を使用。
☑本治法 イトウメディカル社製中野てい鍼柳下モデル95㍉で右太衝に補法。左陰陵泉、右豊隆を圓鍼で瀉法。
☑補助療法
■宮脇奇経治療 宮脇奇経腹診®より、陰蹻脈と足陽明脉と診断。
左照海-右列缺と右陥谷-右合谷にテスターを貼り、腹部所見が変化するのを確認した後、主穴に5壮、従穴に3壮、知熱灸で奇経灸。
施灸後、金銀粒を貼付。
■古野式経絡骨盤調整療法
- 股関節横紋外端の圧痛硬結と、
- 上前腸骨棘下内方の圧痛硬結を、
てい鍼で補う。
☑標治法 全身の気血を流すようにドーゼに気をつけて阻滞を疏通。
※やり方は色々あるので動画をご覧ください。
☑止め鍼×セーブ鍼
治療の最後に、
■中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中の最も虚した箇所に止め鍼をしてドーゼの過ぎ足ると及ばざるを調節。
■百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部にセーブ鍼をして次回まで治療効果を保存。
☑セルフケア 自宅で奇経にドライヤー灸を朝晩毎日するように指導。
☑経過
- このような治療を基本として週に1度の間隔で継続治療を行い、2年後に自然妊娠(特にクリニックには通っていない)。
- 証はほぼ肝虚陽虚証。時々腎虚や脾虚になることもあった。
- 湿痰の影響している時は脾に病実となって現れるので、陰陵泉や地機や公孫から瀉法を行った。
- 選穴も病体に応じて、曲泉や中封や行間に適宜変更。
- その時々の不定愁訴に合わせて、奇経を変更したり、標治法を使った。
例えば、
- 霜焼けになった時は、井穴刺絡をしたり局所に瀉的散鍼。
- 下痢が酷い時は、左曲池の1㍉上の圧痛硬結に知熱灸7壮。
- イボ痔が出たときは、任脉の変法で孔最-照海。
※標治法は下記リンクを参照してください。
➡治療開始から1年後には花粉症が出なくなる。
➡その間、乳管内乳頭腫、大腸憩室炎、めまい等に罹患するも、治療して軽快。
➡初診時の症状も改善し妊娠に至る。
☑考察
本来、肝虚証体質者(正邪)は妊娠しやすいです。
これは『医心方』と『難経』を勉強していただけると理解していただけます。
不妊症の大体が腎虚証から治療をスタートすることが多いく、これはわりかし治しやすいです。
肝と腎は相生関係(虚邪)にあるからです。
現す証(現在の体質、病因病理)が、腎から反時計回りに外れていけばいくほど治しにくくなってきます。
肺虚証は肝に対して相剋関係(賊邪)、脾虚証は相剋関係(微邪、75難)なので、3年かかります。
心虚証は相生関係にありますが、五邪では実邪に当たりますので、5年かかります。
またうつ病を患っている方が多いのも、治りにくい要因になっています。
また、本症例のように、肝虚証であっても陽虚や気虚になってくると、肝虚陰虚証に比べて生命力が低下するため、肝虚体質者であっても時間がかかります。
このように、経絡治療では、妊孕力(にんようりょく)を高め、妊娠しにくい体質から妊娠しやすい体質に改善していくために、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力の強化に努めます。
その指標となるのが、体表観察初見です。
脉、お腹、皮膚の艶、気色などが、治療して良くなればいいと、聖典『霊枢』に書かれています。
特にリアルタイムでその良否を教えてくれるのが脉状です。
“脉が変われば体が変わる”
病脉から正脉に近づけていきます。
正脉とは、強くて柔らかくて締まりのある脉です。
- 強さ=硬さではありません。むしろ硬いは脆いです。
- 柔らかさ=軟らかさではありません。軟らかいは力なく弱いです。
- 締まり=細いではありません。細いは生気に乏しいです。
強さとは弾力であり、柔らかさとはしなやかさであり、締まりあるとはあくまで脉幅があって輪郭が鮮明で引き締まった脉であり、このような和緩を帯びた脉を正脉とします。
ただし、正脉に当てはめるのではなく、患者の素因脉を考慮した健康脉に作り替える作業を、「脉作りの臨床」とします。
ASAの病因病理
先にも書いたように精子に対するアレルギー反応です。
なぜ、精子を外敵と誤認するのでしょうか?
結論を先に述べますが、
「肝魂」の暴走です。
異常を知るためには正常を知る必要があります。
肝の蔵象(生理)を整理していきましょう。
肝は木に属す
肝は五行では、「木(もく)」に属します。
(樹)木は、地上に枝を伸ばし葉を生い茂らせ、地下に根をはります。
このことから、四方八方に伸び伸びと伸びる、伸ばす働きは全て木に属します。
大宇宙である森羅万象の出来事は、小宇宙である人体でも常々起こっています。
人体においては、木のように四方八方に伸び伸びと伸びる、伸ばす働きを、肝とか肝臓とします。
四方八方に、気血を伸び伸びと巡らせる働きと考えてください。
肝は疏泄を主る
そうして、頭の天辺から手足の爪の先まで、気血を巡らし、あらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与えるています。
このような働きを、「疏泄(そせつ)」とします。
肝は将軍の官謀慮出ず
朝目覚めて活動するためには、全身に気血の恩恵を必要とします。
疏泄は日夜為されていますが、むやみやたらに疏泄されているわけではありません。
深い考えのもとに、必要な場所に必要な分だけ気血が疏泄されているのです。
例えるならば、
- 平時であれば、開発が必要なところや遅れているところに、予算を決めて資材を投入するとか、
- 有事であれば、大規模災害が発災した際に支援や物資を調達するとか、戦乱の世であれば、臨国諸国が攻め入って来た際に、前線に兵力を配置投入するとか、
等を指揮系統からトップダウンされるように、気血を身体の必要なところに必要なだけ配分する量を決定して疏泄しているわけです。
このような最前線の状況を見極めてに対応する働きを、一国の将になぞらえて、肝は将軍の官、深い考えのことを謀慮出ずとします。
肝は魂を蔵す
さらに驚くことに、木、疏泄、将軍の官謀慮出ず等々、これらの働きは全て無意識に執り行われています。
これを、「魂」とします。
肝に宿る神気です。
つまり、本人の知らないところで、肝将軍が深い考えのもとに、木の枝葉根のように四方八方に伸び伸びと、全身の至るところに気血を疏泄し、あらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与え内外の外敵からその身を守ってくれているのです。
現代の言葉で言うならば免疫です。
超スーパー免疫機構肝魂
ということで、魂という働きは、肝に蔵されている魂こそが免疫なのです(※以下肝魂とします)。
ところが、私たちは普段これを感じることはできません。
奈良は飛鳥の名医、上雅也先生は、眞鍼堂のブログ内の、『東洋医学の「肝臓」って何だろう』という記事の中で、とても分かりやすく説明されています。
以下原文ママ(※先生のプライバシーポリシーでも注意換気されておりますが、記事の無断盗用は絶対にお止めください。)
軍事力の集中
具体的に、肝臓はどう働いているのでしょうか。
将軍はここぞという時、普段は備蓄して使わない軍事力を総動員します。また「条達」という道を使いながら、ある場所に軍隊を集中させます。
たとえば「火事場の馬鹿力」です。火事だ!となれば、普段持ち上げられない重い物を持ち上げられ、普段は出ないようなスピードで走れたりします。後になって疲れは来るでしょうが、火事を何とかするために、一時的に筋肉に力を集中させるのです。
カゼを引いた時、喉にはウイルスが増殖します。将軍は、これをやっつけるため、条達という道を通って、白血球を総動員させます。もてる力(気=機能)を抗ウイルスのために集中させるため、筋肉には力が足りなくなり、体がだるくなります。すべての元締めは、将軍である肝臓です。
もしも、です。もしも、この将軍が狂った人だったら…。
眞鍼堂ブログより
※詳しくは上先生のブログで本記事を閲覧されることをお薦めします。
眞鍼堂ブログ
眞鍼堂ホームページ
ということで、その身に何か異常が起きた時に、肝魂を認識するようです。
正確には、起こっている現象や、後々思い返してみてアレがそうか!と気づくわけです。
風邪の例えで、上気道にウイルスが侵入する、これを撃退するために喉に白血球が集まる、喉が腫れて炎症する、その結果熱が出て癒えていくということですが、別の言い方をすれば、肌皮あるいは口鼻から侵入してきた風寒または風熱の邪に対して、気血を疏泄して邪正抗争を引き起こすということです。
これを主宰するのが、肝魂であり、肝木であり、肝疏泄であり、肝将軍です。
総じて肝臓という働きです。
私はこれを、
超スーパー免疫機構肝魂
と名付けました。
私たちが健康でいられるのは、この肝魂によって内外の外敵に蝕まれることがないからです。
マクロビオティックの創始者、桜沢如一先生は、『健康の七大条件』を説きましたが、肝魂が正常に発動すれば、この条件を満たすことができるでしょう。
また、肝魂が正常に発動した状態であるとも言えます。
上先生が、もしも、です。もしも、この将軍が狂った人だったら…。
と仰っているように、仮にもし、肝魂が異常な発動をしたら一体どうなるのでしょうか?
常は体の内外を栄養し、外敵にさらされた際には防衛してくれる超スーパー免疫機構である肝魂。
何度も出てきたように、上気道にウイルスという外邪・外敵が侵入したから、駆逐するために気血を疏泄させて邪正抗争という戦いを仕掛けますが、外邪・外敵が侵入していないにも関わらず、侵入されたと誤認して、体のあちこに気血を疏泄して攻撃したらどうなるのでしょうか?
Q.ウイルスが上気道に侵入していないのに侵入したと誤認して上気道に気血を疏泄するとどうなりますか?
A.カゼでもないのに喉が腫れたり、甲状腺が腫れたり、なれの果ては咽頭がんや喉頭がんや甲状腺がんを発病します。
身体各部に及べば、
- 皮膚を攻撃したらアトピーや日光過敏症など。
- 毛髪を攻撃したら脱毛症。
- 血管を攻撃したら各種出血病。
- 筋肉を攻撃したら繊維筋痛症。
- 関節を攻撃したら膠原病。
- 骨を攻撃したらリウマチ。
- 腸を攻撃したらクローン病や潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群。
- 目や鼻の粘膜を攻撃したら攻撃したら花粉症。
そして、肝魂が子宮に誤って疏泄すると、精子を外敵と誤認して攻撃し、結果不妊症を引き起こします。
膠原病や自己免疫疾患やアレルギー疾患と同じく、肝魂の暴走こそがASAの病因病理です。
さてそれでは、肝魂が暴走するのはなぜなのでしょうか?
ここまでが大きな前フリで、ここからが本題です。
それでは一緒に解き明かしていきましょう。
神に従い往来するのが魂
聖典『霊枢』本神篇に出てくる一節です。
この文言に全てが集約されているといっても過言ではありません。
「神」は心臓に宿る神気です。
「魂」は先程来より肝臓に宿る神気です。
「心神」と「肝魂」です。
これ如何に?(後述)。
解き明かす前に、本神篇を見ていきましょう。
霊枢・本神篇
- 天が人に与えたものが「徳」
- 地が人に与えたものが「気」
- 徳と気が交流するものが「生」
- 生を発現させるものが「精」
- 二つの精が結合したものが「神」
- 「神」に従って往来するものを「魂」
- 「精」と並んで出入するものを「魄」
- 物を取り扱う所以となるものを「心」
- 心にあるおもいを「意」
- 意を保持するものを「志」
- 志にもとづいて保持したり変化させたりするものを「思」
- 思にもとづいて遠くを追求するものを「慮」
- 慮にもとづいて物を処理するのを「智」
7.精に並びて出入するのが魄
先ずはこれから始めましょう。
「精」とは腎臓に宿る神気です。
「魄」とは肺臓に宿る神気です。
「腎精」と「肺魄」です。
精とは、父母から授かりし、「先天の精(原気)」という根源的エネルギーと、水穀の精微(飲食物)と天空の清気(酸素)から摂り入れ混ざり合って抽出された「後天の精(原気)」というエッセンスです。
先天に後天が補填されて生気の原という生命力に成ります。
その精に並びて出入するのが魄と言っています。
先天の精はむやみやたらに出入することはありません。
後天の精は摂取と排泄でよく出入します。
このように解釈して、後天の精である飲食物や酸素と同じく、人の体に出たり入ったりするものとは何かと考えたならば、その答えは五官です。
五官とは、
- 視覚
- 臭覚
- 味覚
- 触覚
- 聴覚
です。
外界から様々な刺激を取り入れる働きを魄とし、これを肺が主ります。
肺は皮毛を主ることにより、体表に肺魄が配置され、私たちはこの超高性能センサーを生まれながらにして搭載しているお陰で、視たり、嗅いだり、味わったり、触り分けたり、聴くことができるのです。
8.物を取り扱う所以となるものを心
そうして、取り入れた外界の様々な刺激や情報は、即座に心に送られて認識されます。
現代医学では脳となりますが、東洋医学ではこころで認識するとあります。
本神篇の9~13は、肺魄~心までの思考回路、処理、認識の過程の詳細な解説です。
意→志→思→慮→智と経て、対象を認識します。
目に写った景色にカラーを、耳に聴こえた音色に高低清濁をつけます。
そして、それに対して感情が生まれます。
自我、自意識の芽生えです。
これを心神とします。
つまり心神とは自意識であるということがわかります。
これには大きく2つあります。
好きか嫌いか。
好きとは好感です。
嫌いとは嫌悪感です。
好感という良好な感情は身心によい影響を与えます。
嫌悪感という険悪な感情は身心によくない影響を与えます。
これの回答こそが、次の項です。
6.神に従い往来するのが魂
鍼灸と神仙術で幾多数多の病人を救われた、山本哲齋先生の教えでは、「この世の病の99%はストレスが原因や。」と力強く断言されていました。
今でも昨日のことのように、思い出されます。
良くない感情は心だけでなく体をも蝕んでいきます。
大学教授とお笑いの吉本興業が行った研究で、がん患者に新喜劇や漫才を見せて笑ってもらうと、がん細胞の増殖が抑えられたという話をみなさんも聞いたことがあると思います。
これは笑うという良好な感情が免疫を活性化させたからです。
だから、それの反対が、良くない感情によって引き起こされると考えてください。
免疫は肝魂です。
肝魂は無意識を主る神(働き)です。
一方、自意識を主る神(働き)は、心神であると、本神篇によって解き明かされました。
そして、無意識は自意識の在り方に左右されます。
なぜなら、神に従い往来するのが魂とあるからです。
神を心神、魂を肝魂と解釈すれば、自意識によって無意識が発動するということになります。
嫌悪感は心神を曇らせます。
笑いは免疫を高めがん細胞を抑制したという研究結果より、好感の反対の嫌悪感はこの逆の影響を心身に与えると考えれば、自明の理です。
心神が曇れば、肝魂も曇ります。
心神に従い往来するのが肝魂だからです。
曇った肝魂は盲目の肝将軍です。
盲目の肝将軍は外邪・外敵を正しく認識できるでしょうか?
精子を受精する大切なパートナーとして認識できるでしょうか?
ややもすると誤認して攻撃するかもしれません。
アレルギー疾患、自己免疫疾患、各種がんが増加の一途を辿る現代を見渡す限り、どうやらこの説は正しいようです。
上雅也先生は、狂った将軍と表現されています。
正にその通りです。
ASAの原因である肝魂の暴走は、ストレスにより心神が曇ったために、自分の意思を持たない忠実な臣下の肝魂をも曇らせた結果、盲目となった肝将軍が誤った木、誤った疏泄、誤った肝魂を見境なく子宮に発動したからです。
上先生の言葉をお借りすれば、暴君が狂将軍を生み出したというところでしょうか。
ストレスは最強(恐・凶)の外邪
古代の中国医学は、自意識の在り方によって無意識の発現の仕方が違ってくるということを発見しました。
良好な感情を抱けば、心神が輝き、心は君主の官として神明を出し、肝将軍は謀慮して、必要な箇所に必要な分だけ、木々を伸び伸びと伸ばすように気血を疏泄し、全身のあらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与え、内外の外敵から身を守ってくれます。
これは肝魂が正常に発動した場合で、これを超スーパー免疫機構肝魂とします。
一方、嫌悪な感情を抱けば、心神が曇り、心は暴君に成り果て、肝将軍は暴君の下、盲目の将軍となるため、謀慮することなく闇雲に気血を疏泄し、誤った肝魂を発動して暴走し、正常な細胞を傷つけます。
心神を曇らす感情の起伏を「七情の乱れ」とします。
- 怒
- 喜
- 思
- 憂
- 悲
- 恐
- 驚
現代でいうストレスです。
これが肝魂が暴走する原因であり、肝臓の働き(気)を失調させるので、肝鬱気滞とします。
山本先生が仰ったように、アレルギー疾患、膠原病、自己免疫疾患、あるいは癌、そして本症例のASAまでを含めて、これらの病は、肝鬱気滞瘀血火化が原因です。
心神の曇りに発端した、肝魂の暴走により発病します。
故に、私は、
ストレスこそが
最強(恐・凶)の外邪
だと考えます。
治病求本
肝魂の暴走は陽の極みです。
燃え盛った肝火です。
肝火という邪熱は五臓に波及します。
- 肝火が肝木を焼き尽くせば肝虚証。肝陰虚証から治療をスタートしたら妊孕力を高めるのに1年~。
- 肝火が腎水を焼き尽くせば腎虚証。腎陰虚証から治療をスタートしたら妊孕力を高めるのに1年半~。
- 肝火が肺金を焼き尽くせば肺虚証。肺虚証から治療をスタートしたら妊孕力を高めるのに3年~。
- 肝火が脾土を焼き尽くせば脾虚証。脾虚証からスタートしたら妊孕力を高めるのに3年~。
- 肝火が心火を焼き尽くせば心虚証。心虚証から治療をスタートしたら妊孕力を高めるのに5年~。
経絡治療は、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力を旺盛にします。
私たち日本はり医は、よくなおる経絡治療『日本はり医学会方式』による少数穴本治法で妊孕力を高め、妊娠しにくい体質から妊娠しやすい体質に変えていきます。
妊鍼21穴
妊鍼21穴を卸して、治療はもちろん、毎日セルフケアしてもらいます。
心神を鼓舞し光り輝かせる
精子を外敵と誤認して、誤って肝魂を発動してしまうのは、心神が曇るからです。
感情の起伏をコントロールすることが大事です。
七情の乱れですが、夢分翁は三清浄で三毒を清ますことを説いております。
とはいえ、患者に反省を促すのは得策ではありません。
むしろ、臨床は患者の業の肯定から始まります。
いい方法を授けましょう。
それは、あなた自信が輝くことです。
患者とは、暗いトンネルの中にいます。
暗闇の中でみなさんは何を探しますか?
光りです。
患者にとっての光りは治療家です。
あなた自信が輝いてください。
誰でも簡単に始められることがあります。
- 笑顔
- 感謝
です。
楽しいから笑うのではありません。笑うから楽しいのです。
これが真理です。
感謝が大事です。
私を頼ってくれてありがとうです。
ハングリー精神と肩を並べる力こそが、感謝パワーです。
もし、幸運にも恵まれているとしたら、
そのことに感謝してください。
逆に、妬み、ひがみ、恨みつらみは心神を曇らせます。
執着や後悔も心神を曇らせます。
思い込みも心神を曇らせます。
働きすぎや考えすぎも心神を曇らせます。
あなたが光り輝けば、彼らも光り輝きます。
あなたが変われば、彼らも変わります。
大丈夫。
きっと変われます。
きっと光り輝けます。
ある人が、これを依正不二だと教えてくれました。
あらためて感謝申し上げます。
東洋医学は、心と体と魂と霊の医学です。
頭と体に汗をかき、心を尽くして工夫してください。
おわりに
生殖補助医療(ART)は、神様の医療技術のように思われている節がありますが、着床率は決して高くありません。
性差、年齢別にもよりますが、ざっくり言って着床率は20%、つまり5人に1人の確率でしかありません。
なぜでしょうか?
患者の体質が考慮されていないからです。
妊娠しやすい体質と妊娠しにくい体質の違いです。
着床した20%の1/5の方々は、まだ妊娠しやすい体質だったから着床したわけであり、着床しなかった80%の4/5の方々は、妊娠しにくい体質だったから着床しないのです。
幾らARTを施したところで妊娠しにくい体質を改善していなければ着床しにくいままです。
自然妊娠できれば一番いいですが、晩婚化、晩産化で始めから生殖補助医療に臨まれる方も少なくありません。
どうか、妊娠しにくい体質を、鍼灸治療で妊孕力を高め、妊娠しやすい体質に変えてから、ARTに臨んでいただきたいと切に願うばかりです。
と同時に私たち鍼灸師も、妊娠しやすい体質に変えられる実力を身に付けなければなりせん。
鍼灸の学と術は、一朝一夕には身につかないのがもどかしいですが、どうか目先の利益に走らずに、思い切って鍼灸道に突き進んでいただきたいと思います。
いつか誰かを救えるように。
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