大腸憩室炎の鍼灸治療
■症例
□患者 30歳代男性。
□現病歴 数週間前から突然左下腹部が痛くなり、熱も出て様子がおかしいので医療機関を受診。
診察結果は大腸憩室炎。
点滴や投薬で治療を続けてマシになってきているが、現在も腹痛、下痢、倦怠感がある。
憩室炎は上行結腸やS状結腸に好発しますが、左下腹部痛なのでS状結腸が病巣部です。
また下痢は渋るとのことなので腎の変動が考えられます。
■脉作りの臨床における基盤作り
□左Tポイントを中野式柳下てい鍼で補う。
□左→右の順に脈会を中野式柳下てい鍼で補う。
■診察診断
□腹診 大腹>小腹。
腎最も虚、肺次いで虚、脾最も実、心次いで実、肝は平。
□脉状診 浮・数・虚
□比較脉診 腎最も虚、肺次いで虚、脾最も実、心次いで実、肝は平。
□証決定 腎虚証。
□適応側 男性であるが左下腹部に偏っているので右側とした。
■治療
□本治法 右陰谷を補う→検脉→肺も虚しているので右尺沢を補う→検脉→脾実心実は治まっている。右関上浮かして胃の脉位に虚性の邪を触れる。患側の胃経を切経して最も実所見の強い左上巨虚に枯に応じる補中の瀉法→脉が整う。
□補助療法 奇経治療。左照海-右列缺+左陥谷-左合谷に金銀粒を貼付してその上から5壮3壮で知熱灸。自宅でドライヤー灸でのセルフケアを指示。
□標治法
◆左下腹部の最圧痛点に八卦皮内鍼法。
◆下痢に対して左曲池の1ミリ上の圧痛点に知熱灸7壮。
■経過
現在痛み下痢ほぼ消失。
逆に便秘傾向になってきているので便が詰まって再発しないように適応側を気を下げる側に変えて左の腎虚証で継続治療中。
大腸憩室炎の病因病理
憩室とは腸にできる袋状の膨らみのことですが、膨張するのは炎症するからです。
炎症のメカニズムは、
□気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱。
□湿痰→気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱。
□瘀血→(湿痰)気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱。
の黄金パターンのいずれかです。
つまりストレスが原因です。
鍼灸治療ではこの邪熱を払うように治療をすることになります。
本治法の選穴や適応側、大腸憩室炎の補助療法/標治法については以下を参照してください。
□選穴/適応側
□八卦皮内鍼法
東西南北全八方向に仮止めし、最も痛みの引く方向を調べて固定。
□大腸憩室炎の奇経治療
□下痢のツボ
□知熱灸/ドライヤー灸
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