嘔吐の治療

※イラストが生々しいので苦手な方は閲覧注意

【患者】年小の甥っ子。
【現病歴】大型施設で家族と買い物中に急に気分が悪くなり吐く。急いで帰宅についたがそれからも5~6回は吐いたとのこと。
少し微熱もあり、母親曰く風邪でももらったのかな?


【舌診】舌面を膩苔が覆っている。
【経絡腹診】脾虚のようである。
【証】脾虚証。
【適応側】男の子だから左。
【本治法】左の太白を中野式小里てい鍼で補法。左の大陵も同様に補う。
【補助療法】宮脇奇経治療。左内関-右公孫に金銀粒を貼付して5-3でドライヤー灸。
【標治法】全身に気を巡らすようにササッと小児はり。最後に右合谷にチョンと止め鍼して終了。
【経過】嘔吐は落ち着き、その日の夜に食欲が出てきてカレーうどんを食べたいと言い、1食平らげた。
翌日にはすっかり元気になり登園できたとのこと(^^)v

嘔吐の病因病理

脾には「土」の要素が備わっています。
自然界における土の働きは、雨水を貯水し、濁りを濾しとった清水を地上に湧き出させ、あらゆるところから流れ集まり河川を形成し最終的に海となります。

人体においてもこの現象が見られます。
摂取した飲食物は脾の働きによって清濁に泌別されます。
土が濁りを濾しとり清水を湧き出させるように、濁陰を沈め(降濁機能)、清陽を昇らせます(昇清機能)。
そうして毛細現象を伝ってあらゆる細胞・組織・器官・臓腑経絡・四肢百骸を養い活動力を与え(運化機能)、最終的に人体の海である腎臓に後天の原気として補填されます。
この働きを脾臓としますが、脾臓に虚実が発生すると清濁を泌別できず、濁陰が胃に停滞し上逆して吐きます。

治療は虚実を弁え補瀉調整し、脾胃を和します。
奇経は内関-公孫です。列缺-照海や照海-列缺+陥谷-合谷が効くときもあります。
ムカつきが激しいときは背の七椎下の右脊際の反応を取ると和らぎます。
慢性のケースに観られますが、お腹をよく診ると心窩部~臍下くらいまでの任脉の通りに鉛筆状の抵抗があります(心下筆管)。抵抗の下端にてい鍼を当てて補い、次いで上端に当てて補います。
即効性はありませんが、根気よく継続治療しているとこの抵抗が段々と取れてきて消化器系統の病症が改善されてきます。

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鍼灸師の鍼灸師による鍼灸師のためのowned 鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと 感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、互いを高め合う間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師です。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、願いを込めてこの名前を付けました。 ONE