マクロビ今昔物語

※2020年にfacebookで連載した全10回の記事に、新たに加筆して再編集した内容になっています。
マクロビ今昔物語①
■マクロビオティックとは


桜沢如一が石塚左玄の食養理論に中国の陰陽論を取り入れ、より実践的な食養生として世界に広めたものです。
正食、穀採食とも言います。
人間の最大の目的=健康、をかなえてくれる、最短距離の実践法です。
「陰」「陽」という二つの力の法則、「宇宙の秩序」にのっとった食べ方で、具体的には「玄米を主体とした穀物と、野菜、海藻、豆類、大豆加工食等を、古式純正のみそ、しょうゆ、塩、油」を使って調理します。
特別な場合以外は動物性食品や卵、乳製品を摂ることはなく、砂糖やみりん、はちみつなども一切使うことがありません。
食材選びの基本は「身土不二(その土地、その季節に採れるもの)」。そして精白しない、皮をむかない。アク抜きをしないという、「一物全体食」を心がけます。さらに大切なことは、生命の糧となってくれた食物に感謝して、「よくかむ」ことです。

■ヒストリー


明治期に、正食の祖である『石塚左玄』が、提唱した夫婦アルカリ論が起源です。
日々口にするものは食物のナトリウム(陽)とカリウム(陰)のバランスが正しければ、健康で長寿であるとして『食養会』を発足しました。
左玄の理論を継承した桜沢如一は、更に進めて、「無双原理」「宇宙の秩序」を世界観に加え、広く世界にマクロビオティックの生き方を提示、正食運動として確立、現在の自然食運動の根幹を成しています。
如一の高弟である『久司道夫』は海外で、『大森英櫻』は国内で普及啓発に努めました。
特に大森は、長年の研究の末、動物性のものは一切食べない 「純正正食(完全玄米菜食)」を提唱します。 
「食本主義(食べ物が人を作る)」の哲学から、 「食べ物を正すことで、あらゆる病気を治癒することができる」と説きました。
実践に実践を重ね、病気治しとしての食養の第一人者となります。
それまでの事業は弟たちに譲り、自宅を開放して難病者の食養指導を始め、 多くの患者を救います。

■マクロビ四天王

●石塚左玄(左上)1851~1909 
●桜沢如一(右上)1893~1966 
●久司道夫(左下)1926~2014

●大森英櫻(右下)1919~2005

※papaさんのブログにとても分かりやすく4人の人物紹介がされています。

是非ご覧になってください。

マクロビ今昔物語➁

■日本の食養運動


陸軍で薬剤監、軍医を勤めた石塚左玄は、栄養学がまだ学問として確立されていない時代に食物と心身の関係を理論にし、医食同源としての食養を提唱します。

「体育智育才育は即ち食育なり」と食育を提唱し、食育食養を国民に普及することに努めました。 

■石塚左玄の食養学​

1.食本主義
2.人類穀食動物論
3.身土不二
4.陰陽調和
5.一物全体
詳しくはコチラ 

■左玄の功罪


人間の歯を見たら、前歯は果物の歯です。

そしてその両側の歯が野菜の歯です。
その横が肉食の犬歯です。
ところがそこから奥は、全部穀類の臼歯です。
真ん中が凹んだ人間独特の歯です。
牛や馬の歯は真ん中は平らです。
彼らは種を食べずに草を食べたからです。
石塚左玄が、この歯を見て、「人間の主食は穀物で、おかずは野菜だ」と言ってくれたのはありがたいのですが、犬歯を見て、「少量の動物性は摂っていい」と言ったのです。
「動物性も小魚みたいに一物全体ならば、陰と陽が含まれているから摂っていい」と言ったのです。
そして、これを日本の正食だ、と後に続く人たちが受け取ってしまったのです。
ところが、この小魚入りの正食運動を唱えてきた日本食養会というのは、半世紀に前につぶれました。
この食事を摂れば、病気も治る、頭も良くなると言ってきたのですが、病気をしないで頭もよかったら、みんな長生きするはずです。
それなのに、日本食養会で活躍した指導者をみたら、みんな短命なのです。しかも病気で死んでいます。(無双原理講義録より抜粋)
と大森英櫻は回顧しています。

この大いなる疑問に対してさらに大森は、「宇宙法則からみての正食ということを言わなかったからです。」と続けています。

この宇宙法則のことを無双原理と言います。
桜沢如一が提唱しました。


1896年に出版された『化学的食養長寿論』

マクロビ今昔物語③

■桜沢如一と無双原理


石塚左玄が宇宙法則からみた正食を説かなかったために、日本食養会の指導者はみな短命で病死しました。
食養会がつぶれる頃に入会し、この問題を指摘したために全理事から追放されたのが、後にジョージオーサワとして世界中から称賛を浴びるマクロビオティックの生みの親である桜沢如一です。
桜沢如一は宇宙法則からみた正食が重要だと主張します。
それが「易」です。

●易

「易」とは5000~6000年前の中国で、実在するかどうか今でもわからない伏羲という皇帝が天の運行をみながらこの世の動きを「易」として公開したのです。
「最初に無限の世界があった」、先ずここから始まります。
そしてその中に色々なものが生じます。
無限界ですから無限にエネルギーが飛んでいます。
エネルギーは勢いの強い時は一直線ですが、勢いが弱くなった時は、必ずしずくのように先が曲がってきます。
曲がってくれば当然、回転が始まるのです。
そうして中に入ってくる回転というのが、求心力です。
求心力のエネルギーは、空間があれば回転していますが、一番真ん中まで来たら、回転がきかなくなります。
回転がきかなくなると、反対の方向に戻ってきます。
つまり求心力の回転エネルギーが中心までいって回転がきかなくなると、今度は真ん中から外の方へ向かう遠心力のエネルギーに変わります。
このように果てしない無限の世界に、絶えずこの二つの時計回りと反時計回りの渦があちこちにできているわけです。
無限の中から一番最初に生じたものはこの二つの渦です。
この渦が重なって、段々色々なものを作っていったのです。
「易」ではこの二つの渦を「陰」と「陽」と呼びます。
無極の中に陰陽の「両極」が生じ、それがそれぞれ二つづつに分かれて四つになり、さらに分かれて八卦ができるのです。
そして今度は、その八つの卦がそれぞれ組み合わさって結ばれて六十四卦ができるわけです。
だから、あらゆる世の中の現象は、この六十四卦のどれかに入るわけです。
これが「易」です。

●宇宙の秩序

ところが、科学用語で教育された私たちには馴染みがありません。
桜沢如一は、この易を現代の科学用語に変えてくれたのです。
無限から生まれた「陰」と「陽」の二極が組み合わさってエネルギーとなります。
エネルギーは大きな「陰」の中に小さな「陽」、大きな「陰」の中に小さな「陰」、大きな「陽」の中に小さな「陰」、大きな陽の中に小さな「陽」の4つです。
この4つのエネルギーが凝集して、素粒子=空、空間に。
素粒子がさらに凝集して元素=大地が生まれました。
この元素がさらに凝集したのが分子、植物=クロロフィル(葉緑素)です。
この植物によって生かされているのが、動物=ヘモグロビン。私たち人間は、この宇宙の大パノラマの最終登場人物です。
そしてあらゆる全てのものは、無限=絶対の中に包含され、無限を意識することができます。
無限、宇宙→「陰」と「陽」の二極→光、エネルギー→素粒子、空、空間→元素、大地→分子、植物、クロロフィル→動物、ヘモグロビンという展開は絶対であり、動かすことができません。「宇宙の秩序」です。

●無双原理

これをマクロビオティックの提唱者、桜沢如一は「無双原理」と名付ました。
人間が正常な状態を維持するためには、「宇宙の秩序」を正しく実践することです。
その生き方こそ、穀菜食の生き方なのです。
マクロビ今昔物語④

■正食の原点


正食とは何かという問題に、無双原理(宇宙の法則・秩序、易の造語的日本語訳)で答えを出すとすれば、「陽性の動物は陰性と結ぶ」、つまり動物は陰性な植物を」食物とするということです。
世の中は陰▼から陽▲が生じ、陽▲から陰▼が生じます。
最初の二極は陰性の世界です。
そしてそれがそれぞれ結ばれたら、エネルギーになるのですからものすごく陽性になります。
次にエネルギーの固まりの素粒子になったら、これは放射能ですからほとんど光のない暗闇の世界です。
この陰性の放射能が一つに固まって元素を作ります。
この地球の大地が元素の固まりです。
太陽もです。
元素の世界は陽性で、みんな動き回っています。
だから地球も自転しています。
元素は大体大地のことです。
そしてこの動き回る大地から、非常に静かな動けない陰性の草が生じてきました。
この陰性の草を人間でも動物でも噛んで噛んで噛みしめてエネルギーを加えると、今度は逆回転して(前回投稿の陰陽の渦を参照)体の中を動き回る熱を持った赤い血になります。
陽性になったということです。
宇宙法則によって陰▼から陽▲が生じ、陽▲から陰▼が生じ、陽▲と陰▼が結ぶのです。
だから、動物▲は草▼とは結ぶのです。
では、この赤い血の動物である人間▲が動物▲を食べたらどうなるかといえば、宇宙法則違反になります。
陽▲と陽▲は結ばれない✖。
プラスとプラスの電気をもったら、パッと分かれてしまいます。
宇宙の法則から見て、正食の一番の原点は、まず草が人間の食べ物であるということです。
マクロビ今昔物語⑤⑥

■地球の発生史と正食


最初に植物が生えて、それを動物が食べてきました。
43億年前に一番最初に水を生じ、そこへ単細胞のプランクトンが生じました。
そのプランクトンの中にも陰性▼と陽性▲があります。
陰性の方のプランクトンが植物に変わっていったのです。
海の苔になり、藻になり、そして海藻になっていったのです。
次に、10数億年と少し経った時に、今度はその海の苔が陸に上がってきて変化して、シダ類になっていったのです。
海の中にも苔(植物バクテリア)ができて、それを食べたのが動物バクテリアであり、藻ができてそれで生きていたのが魚です。
そして、苔が陸へ上がっていったら両生類が出てきたのです。
そして、その陸へ上がった苔がシダ類になったら、シダ類が陰性で電柱くらいに大きいのがいっぱい生えてきた。
そういう陰性のものを食べた動物があの恐竜です。
今から1億年前は、この地球上に大きいのは80トンくらいの大人しい恐竜がのっそりのっそり平和に暮らしていたのです。
そして、陸の方も宇宙法則によって絶えず変わっているわけです。
太陽の周りを地球が1年間に一回りして春夏秋冬の気候を作るけれども、もっとすごいのはまたこの太陽系が銀河系の中を2億年かかって一回りしているのです。
だから時々物もどんどん変化しているわけです。
約1億年前に突如として天変地異が起こり、電柱のようなツクシンボみたいなものがみんな地面の中に埋没してしまったのです。
そこへ、装い新たに登場してきたのが木です。
その気を食べて育ったのが、我々の祖先の哺乳類です。
身長だいたい10~20㌢の木ネズミです。
これが我々哺乳類の祖先です。
その木もだんだん実を作るようになり、その食べ物の変化に合わせて、動物も変化していったのです。
ネズミがいつしかサルになっていったのです。
そして、今度はどんどん気候が暖かくなったら、木の実も大きな果物ができるようになり、それを食べたチンパンジーみたいなのが、体が大きくなり過ぎたために、ボトボトと地上に落ちてきたのです。
これがゴリラです。
そのときには目の前に、今私たちが見るところの高等植物が生えていたのです。
そして、木から落ちたゴリラは葉っぱだけしか食べていない。
チンパンジーは同じ木の実でも果物だけしか食べていない。
我々の祖先の猿人だけが木の実を食べてくれました。


そして、地上へ降りた猿人は、今度は草の実を食べるようになりました。

しかも、草の実の最高の傑作の禾本科(イネ科の旧称)です。
地球が安定期に入って、一番最後にこの世に現れてきたのが、この素晴らしい禾本科です。
これには、陰陽のエネルギーが全部入っており、一物全体で全部食べたら素晴らしいのです。
一方、サルの餌というのは単純で、果物を食べるのですが、蒔けば芽が出る堅い生命のもとになる種は食べませんでした。
そして、種の周りの果肉のところだけ食べたのです。
これではエネルギーが不足するし、栄養もほとんどありません。
陰性の果物を摂ったので、チンパンジーは体だけは大きくなりました。
その代わり、重要な脳が少ないのです。
ゴリラもあんなに体が大きいのに、大脳は500㌘もありません。
それよりもっとすごいのは恐竜です。
まだ未熟なシダ類を食べた恐竜は、体重が80トンあっても、モノを考える大脳はほんの少ししかないのです。
人間だけがどうしてこんなに大きな脳をもっているのかといえば、一物全体の種を食べたからです。
種の場合は、その植物全体の栄養分を持っているのです。
陰と陽のエネルギーが凝集して、この禾本科ができたのです。
この禾本科を食べたために猿人は、生食だったけれども、脳は750㌘くらいもありました。
人間がもっと素晴らしくなったのは、50万年前くらい前の原人がの骨を見るとわかります。
骨の周りには、どうも火を使った跡があるのです。
ということは火食をしたのです。
生で摂ったら、栄養がみんな吸収されないのが、火力を使い、煮たり、焼いたりして、柔らかくして摂ったために、充分に一物全体の栄養が入ったのです。
これが、脳を作ったのです。
だから、50万年くらい前の我々の祖先の原人の頭が急に、1300㌘の大きさになったのです。
現在が1500㌘くらいです。
これは、今から1万年前に、人間が焼畑をやり始めて、禾本科をいっぺんにまとめて食べるようになったからです。
それまでは、満足に食べられなかったのです。
約1万年くらい前から、人間の大脳が極端に大きくなったのです。
それでも、禾本科を食べている東洋人の頭は大きいけれど、宇宙法則違反の肉食をしている西洋の民族の大脳は日本人より約1割小さいのです。※欧米でも食養をされている方はこれに含みません。
ところが、最近の日本人は、また小さくなってきました。
肉食が多くなったためです。
特に若い人たちは、大切な大脳が小さくなってきているのです。
このように、食べたものが血になり、それが動物や人間を作っているのです。
肉食動物には、大脳はありません。
だいたい生の草を食べている草食動物もものを考える大脳なんてほとんどありません。
だから、人間も最近、肉食が増えているので怖いということです。
だんだん日本人も大脳が小さくなっていているのです。
このように、宇宙法則から見て、人間の最高の食べ物のは何かということを考えると、穀類は最高傑作です。
その穀類を主食にするということです。
そしておかずには野菜を摂る。
これが正食です。
宇宙法則、つまり桜沢如一が提唱した無双原理にのっとったものが、正食です。
マクロビ今昔物語⑦

■再び戻って日本の食養運動


前回の投稿で、動物である人間▲と動物▲は結ばれないので、肉食は宇宙法則違反、人間▲は植物▼と結ばれるという無双原理に基づき、主食に穀類、おかずに野菜を摂るのが正食としました。
ところが、日本の食養運動は正食の祖である石塚左玄の犬歯の誤解釈によって間違ってしまいます。※マクロビ今昔物語②を参照。
左玄が初代会長を務めた『日本食養会』の指導者たちは「食養をすれば病気が治る、若返る。」と言いましたが、みんな短命で病死したのです。
会の末期に入会した桜沢如一はこのことを指摘したために、追放され、琵琶湖のほとりへ来て、『無双原理講究所』という会を創って、新たな玄米運動を展開し、無双原理に準拠して教えてゆきました。
後の高弟である大森英櫻が、桜沢如一が書いた本の中に当時の食箋(体質・症状に合わせた食事の処方)が沢山記載されているのを調べると、一ヵ月のうちに20日間も動物性が入っていて、これは大変な間違いであると指摘しています。
後に先生は血みどろになってその食箋の修正に努めましたと講義録で後述しています。

※以降、講義録からそのまま抜粋します。

でも、修正が遅かったのです。
本当に桜沢先生が、それがわかったというのは、死ぬ3年前でした。
食養会の頃、先生は大変な間違いをやってしまった。
先生も(左玄と同じく)、「小魚くらいはとっていいだろう」と言って、摂らしたのです。
ところが、お弟子さんがみんな不幸になってゆきました。
それで桜沢先生は、死ぬ2年前に大変な書物を残しています。
それまでは、桜沢先生は健康の六大条件(一つづつ点数がついていて、合計で100点になる)というものを出して、この六大条件が完備すれば、本当に健康なんだと言っていました。
ところがこの六大条件では、お弟子さんがみんな死んでいってしまうのです。
そこで桜沢先生は、「自分は血みどろになってやってきて、70歳になってやっと、本当の食養というものがわかった。最高の正食というのは、七号食なんだ、七号食をやれば、人間は本当に健康になるんだ。それには健康の条件に、七つ目の条件を一つ加えないといけない。」
そう言って、7番目の条件に55点を入れたのです。
7番目の条件とは何かというと、「正義、ウソをつかない」ということです。
だから正食しても、正義感がないとその人は見かけ上は健康であっても、非常にきわどい病気をしているということです。
桜沢先生は、「もう死んでも死にきれない、弟子の人たちはみんな不正義だ」と言いました。
非常に気の毒なのは、この「健康の七大条件」という本が亡くなる2年前に書かれたことです。
結局、桜沢先生も宇宙法則を本当に分かったのは、この頃なんです。
この本に、「自分は宇宙法則というのを観念的に言って、血みどろになってやってきたけど、やっと70歳にして、宇宙法則がいかに重要かということがわかった。弟子の人たちはみんなウソつきだ」とあるのです。
つまり詳しく言うとこういうことです。
マクロビ今昔物語⑧

■正義ウソをつかない


桜沢如一が提唱した七号食を最高位とする食の十段階
食養料理の段階表(%)
  1. −2号食:主食穀物10:植物性30:味噌汁10:動物性30:果物・デザート15:デザート5
  2. −1号食:主食穀物20:植物性30:味噌汁10:動物性25:果物・デザート10:デザート5
  3. ±0号食:主食穀物30:植物性10:味噌汁10:動物性20:果物・デザート10
  4. +1号食:主食穀物40:植物性30:味噌汁10:動物性15:果物・デザート5
  5. +2号食:主食穀物50:植物性30:味噌汁10:動物性10
  6. +3号食:主食穀物60:植物性30:味噌汁10
  7. +4号食:主食穀物70:植物性20:味噌汁10
  8. +5号食:主食穀物80:植物性10:味噌汁10
  9. +6号食:主食穀物90:植物性10
  10. +7号食:主食穀物100※最高の正食

※前回に続き、講義録より抜粋

桜沢先生が教えた、ジャコ(小魚)入りの玄米食を教わった人たちは、みんなジャコ入り玄米食で指導しているのです。
弟子の人たちは、桜沢先生の言った通り、「玄米を食べさえすれば、健康になり、病気も治り、そして、若返り、さらに精神、心もよくなる」と信じ、その通りの食事をし、指導をもしたのです。
ところが、この人たちがみんな病気をしているのです。
病気をしていたそのときに、自分たちの食べ物の間違いから病気になったことを反省しなければいけないのに、無双原理での判断をせずに、病人の指導をしている。
気の毒だけれど、その本(健康の七大条件)の中に、名前が全部出ています。
その中で、死んだお弟子さんも随分います。
例えば、Sさんという方は、桜沢先生について、ヨーロッパで病気指導のトップでした。
ところが、彼女はベルギーでひどい白血病になりました。
ところが、自分の病気も治せなかったのです。
それなのに、堂々と、大きな顔をして、指導して、みんなから、お金を取っていたのです。
それを知った桜沢先生は、彼女を追放しました。
病気をして、自分で治せたら人に玄米を教えてもいいのです。
ところが、自分が病気になったときに、みんな医者に行っているのです。
病気になって、医者に行ったということは、その人の勧めた玄米は、危険だということです。
桜沢先生は、かわいがった弟子が、大変なことをやってくれたと後悔しています。
その中に、今現在、日本やアメリカで指導している人たちの名前が、全部出ています。
最近、ドイツの玄米運動の最高責任者だったE氏や、東京では日本CI協会(玄米菜食の普及団体)の要職だったU氏が亡くなりました。
私から見れば、あの方たちは、本当の無双原理を勉強せず、「何でも自由に食べるのが自由人だ」なんて言っていて、急に死んでいったのです。残念です。
本当に助かりたいという人は、真剣に無双原理をもって、自分で判断力を高めていくことです。
宇宙法則によって、私たちの体質も、刻々と変わっていくのですから、最初に教わった食箋のままで一生涯やっていたら、大変なことになります。
この宇宙法則を見たら、陽は陰に、陰は陽に刻々と変わっていくのですから。
だから、体質が変わったら、その体質に合わせて、食箋も変えていかなければなりません。
私がみていて、いちばん皆さんが、間違っているのが、最初の頃に教わった方法が、一生涯変わらぬ正食の方法だと思っていることです。
だから、最初にジャコ入りの玄米食を教わった人は、大変なことになります。
でもまあ、これでいいのかなとも思っています。
マクロビ今昔物語⑨
■まとめ

マクロビオティックはただ玄米を食べればいいというわけではありません。
取り合えず玄米を食べておけば健康的だという風潮がありますが、とんでもない間違いです。
下手をすれば病気もするし、命を落とすことさえあるのです。
そこには少なからず法則があります。

●無双原理に基づいて行うこと
宇宙の秩序にのっとった食べ方とは、玄米を主体とした穀物と、野菜、海藻、豆類、大豆加工食等を、古式純正のみそ、しょうゆ、塩、油を使って調理します。

●身土不二、一物全体食、よくかむを実践します。

●基本的に一日二食とし、間に軽いものを摂ります。
朝食は一日のエネルギー源となるものです。
主食の玄米ご飯を中心に、造血作用のあるみそ汁、少量だけど体のバランスを整えてくれる基本食(鉄火みそ、ねぎみそ、ひじきこんにゃく、きんぴらごぼう、れんこんきんぴら、ひじきれんこん、塩昆布、昆布のつくだ煮、しいたけ昆布、あずきかぼちゃ、あずき昆布、あずきかぼちゃ昆布、切り干し大根と高野豆腐の煮もの等)を一品入れて、あとは季節の野菜で変化をつけます。
間食はおやつ程度のものを用意します。※現代のお菓子やスウィーツとは違います。
夕食は疲労物質の排出を促すよう、野菜を多めにし、主食も玄米ご飯だけでなく、めん類や、天然酵母パンなどを添えて、少し陰性に。

これは一般的な、つまり健康な人の食事パターンで、病気や症状のある方は、当然体質に合わせて食箋を工夫します。
その時に考慮するのが体質で、やはり無双原理でみていきます。

  1. 陰性の肥大:肥満型/春/朝/青少年期
  2. 陽性の肥大:多血型/夏/昼/幼児期
  3. 陽性の萎縮:筋骨型/秋/夕/壮年期
  4. 陰性の萎縮:貧血型/冬/夜/老年期
体質・四季・年齢に応じた食事と料理法を実践し、中庸にもっていきます。
興味のある方は自分で調べてください。
私には指導をする資格がありません。
そのことについては次回最終回でお話しします。
●健康の七大条件
これが何より大事です。
桜沢如一先生が血みどろになって晩年に分かったことです。
  1. 絶対に疲れない
  2. ご飯がおいしい
  3. よく眠れる
  4. 物忘れしない
  5. 愉快でたまらない
  6. 判断、行動も万事スマート

7.ウソをつかない


大森英櫻先生の講義録よりそのまま抜粋します。


■純正穀物菜食の提言

~それから、私は、インドにいる桜沢先生に、どうも日本の石塚式食養というのは大きな間違いをやっているのではないかと手紙を出しました。
「宇宙法則では、陽と陽は結ばれない、これは絶対の法則である。したがって、赤い血を持った人間が、赤い血を持った魚を食べたのでは、これは絶対に宇宙法則の上で結ばれない。宇宙の法則では、赤い血は青い草と結ばれる。そういう法則違反の物を、正食として認められない。」
これを桜沢先生に書いて送りました。
桜沢先生はびっくりして、「やっと本当の人間に逢えてうれしい。それからわれわれの食養は間違っていた」と言われました。
それでインドへ行ってから人間改革が最高の食養であると言い出したのです。
さらに、桜沢先生は晩年七号食(※今昔物語⑧を参照)が最高の食養であると言いました。
桜沢先生が提唱していた健康の条件は、長い間六大条件でした。
ところが晩年になって、第七条件を付け加えています。
第七の新しい条件に、点数55点を入れたのです。
今まで合計で100点であった六大条件というのは、第七条件が入ったために45点です。
そのいちばん重大な第七の健康の条件というのは「ウソをつかない」ということです。~
みなさん、ウソをついていませんか?
マクロビ今昔物語⑩
正に奇跡や大変な病苦を癒すこともあれば、ややもすると普通食より危ないのがマクロビオティックです。
石塚左玄先生のお弟子さんも、桜沢如一先生のお弟子さんも、ほとんどの方が、短命で、病死されました。
桜沢先生の高弟の久司道夫先生と、大森英櫻先生は長生きされました。

久司先生は食養を世界に普及啓発されました。
欧米のセレブ達がこぞって実践しているのがほぼ『クシマクロ』です。
そして、逆輸入される形で近年の日本のマクロブームを引き起こしました。
日本人は欧米から来るものに弱いです。

大森先生は国内で、ただひたすら自分の道に徹しました。
自宅を開放して多くの難病者の食養指導を行い、奇跡的快方に向かわせました。
ご自身の最期は、家族に看取られながら息を引き取られたとのことですから、本当に無双原理で食養を実践し、桜沢先生の健康の七大条件を貫徹されたのは大森先生だけかもしれません。
その一端をご紹介させていただきます。

●講義録より抜粋

~私は、かつて桜沢先生が日本各地で盛んに運動したところを全部回ったのです。北海道へ行ってみたら、、ここはもう玄米運動は壊滅状態でした。副会長が北大へ入院して3年もたっているのです。何の病気だと聞いたら、肺に腐った痰がたまる病気で、ベッドに寝たきりなのです。たまたま、東京から玄米の指導者が来てくれたのだがぜんぜん治らないというので、「おかしいじゃないか、玄米で病気を治す会の副会長が病院で3年も寝たきりとはどういうわけだ。玄米は食べているのか?」と聞きました。すると玄米はたまに摂り、あとは病院のものを食べていると。しかも、東京から来た指導者が「君は陰性だから、この分析表で見たら、いちごは陽性だからいちごを食べなさい。」と指導したというのです。当時は、今みたいにいちごは簡単に手に入らないのに、探し回ってわざわざ高いのを買ってきて毎日食べていたのです。そんなことをしたら、いっぺんに結核菌が暴れだします。それよりなぜこんなに痰をためたのか。
これは、膿胸という病気で、お腹は腐った痰で膨れ上がり、息をすると臭いのがゲボッときて、話している最中に青黒い痰がドロドロと出てくるのです。3年も入院して治らなかったら、なぜ退院しなかったと聞くと、入院した当初は胸はこんなに腫れていなかったと言うのです。じゃあ夕食に何を食べているのかと聞くと、そばを食べているという。そばを食べていたらこんなに陰性になっていないはずです。ところがそのそばは全部外のそば屋に注文したと言うから、とんでもない食養をやっている思って、「とにかく今日は北海道の会員全部集めろ」と言いました。
その会長の自宅に電話で呼んだ会員30人くらいを前にして、「今からこの病気の治し方を見せてやる」と言って、病人を応接間の寝台の上に大勢の目の前で寝かせました。お腹は腫れているし、息は臭い。それよりもウっとやるとドロドロと青黒い痰の腐ったのが膿みたいに出てくる。
こういうのを治すには、食べ物はそば粉に塩を入れたのを丸めて油でジュンと揚げて、口に入れさせます。そして「胸を治すから」と言って、しょうが湿布を始めました。すると、胸をお腹がゴボンゴボンいって動き出した。ただ温めただけで、そのたびに口から痰がゴボゴボいって出てきます。そして、胸に里芋パスターを貼りました。ところが、腫れあがったお腹でものすごく里芋がいるので、そこにいいた会員5~6人にどんどん里芋をすりおろしてもらって貼りました。貼ってその上にカイロをのせて温めました。胸にいい血がきて、ドーンドーンと動き、痰がまとめてドロドロになって出てきました(しょうが湿布と里芋パスターについては調べてください)。
このように正しい食事と塩気を入れて、手当をすれば痰なんて簡単に体から出すことができるのです。~

大森先生は、自分の体で人体実験を来る日も来る日も繰り返したそうですが、だからこそ食養で本当に病気を治すことができたのです。
最終稿.私とマクロビオティック

最後の最後で私の話です。

私は今年で41歳(※2024年現在44歳)になりますが、26歳の時に食養の世界に足を踏み入れました。
興味があったのと、自分がもっともっと健康になりたかったのと、患者に勧める場合に己の実践なしには勧められないと思ったからです。

いきなりまともに玄米を食べると、ひどい好転反応が出るということで、玄米粥から入って徐々に慣らしていきました。


※好転反応は以下の通り
  1. 玄米を食べ始めたらガリガリに痩せてきた
  2. 玄米を食べ始めたら閉経前なのに月経が長期間止まっている
  3. 体が硬くなってきた
  4. 関節や筋肉に痛みが出てきた
  5. 体が冷えるようになった
  6. 朝起きが悪くなった
  7. イライラしやすかったり、感情の起伏が激しくなったなどという症状がでることがあります。
これらはいずれも、今まで『邪食』で摂ってきた動物性の要素を抜かずに、玄米で体細胞を締め付けることによって起こると推測されます。

これを防ぐためには、穀菜食を始める際、初めのうちは分搗き米、胚芽米、白米、麺類を主食とする、玄米を食べるときは、体を緩める作用をもつ食材と一緒にする、穀菜食を始める前に、短期間無塩食をする、数日から数週間、穀物摂取量を大胆に制限する、などの対応が必要です。


魚肉も一切断ちました。

飲料水も番茶です。
味噌も、しょうゆも、塩も、油も全て古式純正を使って調理。
最終的には、玄米にごま塩をふりかける、みそ汁、季節の野菜だけを食べるところまでいきました。

ところが、ある時、ひどい風邪をひきました。

何日も熱が出て治まらない、体もしんどい。
つまり私は病気をしてしまったのです。
刻々と変わる体質に当時の食箋を合わせられなかったのでしょう。
結局、その風邪はは鍼灸で治したと思います。
自分の病気を玄米で治せなかったら人に玄米を教えてはいけないという、七大条件の七番目の最も大事な条件、「正義、ウソをつかない」を破らないためには、さらに研究を進めるか、ここで止めるかのどちらかでした。
ウソをつくと悲惨な人生が待っています。
私は後者を選びました。
こうして私のマクロビオティックはそれっきりです。

2つ年下の妻は栄養士で料理を作るのが大好きです。

そんな彼女がよく私に合わせてよく付き合ってくれたと思います。
本当に感謝しかありません。
妻も、自分が学んできた現代栄養学と全く違う世界だったけど勉強になってよかったと言ってくれたのが救いです。
当時は修行僧みたいな生活でしたが、よかったこともたくさんあります。
そのうちの一つが、生まれたばかりの息子をマクロで育てたことです。
玄米や切り干し大根をよく噛んで柔らかくして、離乳食として食べさせていました。
その甲斐あってか、基本的に流行り病にかからないし、エネルギッシュですし、カンが鋭いです。
今はもう普通食ですが、未だに当時の貯金が残っているみたいで元気です。
そんなわけで私は現在は普通食です。
妻の作ってくれる世界一美味しいご飯を、毎日子どもたちといただいています。
そして大好きなもの食べたい時に食べています。
ウソはついていません。
自分の病気を玄米で治せなかったので患者には一切玄米菜食を指導したことはありません。
地獄に落ちることはないかなと思っています。
長文をお読みいただきありがとうございました。
みなさまの三つの輪が光り輝くことをお祈り申し上げます。
(了)
マクロビ四天王
●石塚左玄1851~1909

●桜沢如一1893~1966

●久司道夫1926~2014 

●大森英櫻

参考文献

『無双原理講義録』大森英櫻|宇宙法則研究会

『一彗の穀採食BooK』大森一彗|宇宙法則研究会一彗のクッキング

『自然派ママの食事と出産・育児』大森一彗|サンマーク出版

『マクロビパパの奮闘記』papa|http://macrobi.livedoor.biz/

宇宙法則研究会 穀菜食料理学校 一彗のクッキング

ONE

鍼灸師の鍼灸師による鍼灸師のためのowned 鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと 感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、互いを高め合う間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師です。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、願いを込めてこの名前を付けました。 ONE