補法と瀉法の基本刺鍼

鍼を刺入する際に痛みを与えないための条件
  • 刺し手
  1. ​鍼柄はるべく柔らかく持つ。
  2. 指頭で持たず指腹で持つようにする。
  3. 鍼体がたわまないよう、力がまっすぐ鍼尖に届くようにする。
  4. 鍼は無理に刺入しない。自然に刺入できるまで待つ。
  5. 鍼先の感覚を捉えるように心がける。

  • 押し手
  1. ​左右圧は鍼が動くのを妨げない。
  2. 穴所に密着させる。
  3. 周囲の皮膚面に平らであり、押し手を置いた穴所だけが凹まない。
  4. 鍼尖の方向を安定させる。
  5. 刺鍼中は微動だにもさせない。

補法の基本刺鍼 普通部・高等部編
用鍼は、原則として銀1寸3分1番鍼。

  1. 補法は虚、即ち生気の不足を補うのが目的であるから。
  2. 経に随いごく軽く切経~取穴する。
  3. 押し手を軽く構える。
  4. 竜頭を極めて軽く持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
  5. 鍼尖を静かに穴に接触させる。
  6. とどめたまま鍼が撓まないように静かに押し続ける。
  7. 抜鍼にあたっては、押し手の左右圧をかけるのではあるが、押し手の指の間に鍼のある事を確認できる程度で締め過ぎないこと。左右圧はスーッと強めて、決して衝突的であってはんさらない。
  8. 抜鍼と同時に鍼口を閉じる。

瀉法の基本刺鍼
用鍼は、原則としてステレンス1寸3分1番~2番鍼。

  1. 瀉法は実、即ち邪気を取り除くのが目的であるから。
  2. 経に逆らい切経~取穴する。
  3. 押し手を構える。
  4. 竜頭は補法よりもやや強めに持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
  5. 鍼尖を穴に接触させる。
  6. 経に逆らって刺入する。刺入できなかったら刺入を1回やめる・また押す・やめる・押すを繰り返す。
  7. 抵抗を度として鍼が滑らないように押し手の母指と示指でしっかり保持し、下圧は鍼先の方向にかけ、ゆっくり抜鍼する。
  8. 下圧の度合いは脉状によって異なる。
  9. 鍼口は閉じない。
  10. 抜鍼後1呼吸おいて、押し手を取る。

補法の基本刺鍼 研修部・上級者編
用鍼は、原則として銀1寸3分1~2番鍼。

  1. 経に随いごく軽く切経~取穴する。
  2. 押し手を軽く構える。
  3. 竜頭を極めて軽く持ち、その鍼を経の上の方から引いてきて、押し手の母指と示指の間に入れる。
  4. 鍼尖を静かに穴に接触させる。
  5. 押し手の左右圧をうーんと緩めて、鍼が撓まないようにスーっと静かに押す。
  6. 押し手の左右圧を段々強め、鍼についた油を拭き取るようにして、ビャっと抜いてバッチリと鍼口を閉じる。

瀉法と補中の瀉法と和法の基本刺鍼
実邪に応ずる瀉法
  • 浮実の脉状に応ずる瀉法
用鍼は、原則としてステンレス1寸3分1~2番鍼。

  1. ​経の流れに逆らって切経~取穴し、押手を構える。
  2. 刺手は竜頭をある程度しっかり持ちすみやかに2~3㍉刺入し幅狭に刺動法(押すやめる押すやめる)を行う。
  3. 抵抗を度として、押手にてパーっとゆっくり下圧をかけ、鍼はおもむろに抜鍼する。

  • 弦実の脉状に応ずる瀉法
用鍼は、原則としてステンレス1寸3分2~3番鍼。

  1. ​経の流れに逆らって切経~取穴し、押手を構える。
  2. 刺手は竜頭をある程度しっかり持ち、すみやかに4~5㍉刺入し幅広の刺動法(押すやめる押すやめる)を加える。
  3. 抵抗を度として押手にてゆっくり下圧をかけ、ゆっくり鍼を抜きあげ、鍼先が鍼口を離れても尚、下圧をかけ続ける。

虚性の邪に応ずる補中の瀉法
  • 塵の脉状に応ずる補中の瀉法
用鍼は、原則としてステンレス1寸3分1番鍼。

  1. ​経の流れに逆らって切経~取穴し、押手を構える。
  2. 刺し手は竜頭を軽く持ち、接触ないし1㍉程度刺入し、補って、スーっと抜鍼。その際押し手は、わずかに穴所に密着させる程度でよい。

  • 枯の脉状に応ずる補中の瀉法
用鍼は、原則としてステンレス1寸3分1番鍼。

  1. ​目的が瀉法であるから、経の流れに逆らって切経~取穴し、押し手を構える。
  2. 刺し手は竜頭を軽く持ち、補法の手さばきで2~3㍉刺入し充分に補った後、幅狭の刺動法(刺し手で鍼を持つ離す持つ離す)を加え、抵抗が取れたら押し手の下面にて穴所に密着させ、スーっと抜き去る
  • 堅の脉状に応ずる補中の瀉法
用鍼は、原則としてステンレス1寸3分2抜鍼。
​経の流れに逆らって切経~取穴し、押し手を構える。
刺し手は竜頭を軽く持ち、補法の手さばきで3~4㍉刺入し、やや幅広の刺動法(押すやめる押すやめる)を繰り返し、抵抗を度として押し手にて穴所に密着さすスーっと抜き去る。
陰実和法
  • 気血の滞りの脉状に応ずる和法
用鍼は、原則として銀1寸3分1~2番鍼。

  1. 経の流れに随って切経~取穴し、押し手を構える。
  2. 刺手は竜頭を軽く持ち、経の流れに随って、目的の深さ「接触から、2~3㍉」刺入し、押しつけたり緩めたり(鍼を持ったり離したり、持つ離す持つ離す)を繰り返す。
  3. 抵抗がとれたら、押手の下面にて、鍼口を保護し、おもむろに抜鍼する。
  4. 一呼吸おいて、押手を離す。
てい鍼の基本刺鍼
用鍼は、原則として柳下てい鍼(通称40てい)。
主に気に敏感な患者の補法に用います。

圓鍼の基本刺鍼
用鍼は、原則として柳下圓鍼。
主に気に敏感な患者の瀉法に用います。
※てい鍼やざん鍼で行う方法もあります。

小児に対するてい鍼の補瀉
用鍼は、原則として小里てい鍼。
てい鍼の尻尾は補法、頭は瀉法に用います。

Meridian therapy is an art. Meridian therapists are artists.
経絡治療はアートであり、経絡治療家はアーティストです。
基本刺鍼の練習と、1日10分間の経絡治療学の勉強を習慣化してください。
衛気と営気と超衛気に対する散鍼
標治法の一種です。

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鍼灸師の鍼灸師による鍼灸師のためのowned 鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと 感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、互いを高め合う間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師です。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、願いを込めてこの名前を付けました。 ONE