予定日超過と微弱陣痛の症例
初診 2019年1月17日
☑患者 30代女性、看護師さん。
☑現病歴 予定日を過ぎても陣痛が起こらないということで、お世話になっている助産師の先生と来院。
週明けの21日朝には入院が決まっている。
助産院でお産できるタイムリミットまで後4日。
☑脉状診 浮、数、やや実。
☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
☑経絡腹診 腎が虚のようだ。
お腹が張っている。
☑証決定 腎虚証。
☑適応側 気を引き下げるため左。
☑本治法
▶銀1寸3分1番鍼にて左陰谷を補う⏩検脉⏩腎が充実⏩肺も出ている⏩相剋経も整っている⏩陽経を診ると右関上浮かして胃の脉位に虚性の邪を触れる▶左胃経を切経して最も邪気実の客している左豊隆にコバルト1寸3分2番鍼にて枯に応ずる補中の瀉法⏩脉状に和緩を帯び陰陽共に整う⏩頚肩のコリが和らぎお腹の張りが楽になる。
☑標治法
▶陣痛促進穴 予定日の1週間前になると背部督脉上に現れる非生理的な反応を陣痛促進穴とする。
だいたい第3胸椎の高さに出現して予定日が近づくにつれ第5胸椎の高さまで降りてくる。
第5胸椎まで降りてきたら2日以内に陣痛が来る。
予定日超過の予後は、陣痛促進穴の高さで判定する。
タイムリミットと逆算して間に合うかどうかを判断する。
ということで確認すると第5胸椎の高さまで降りてきている。
逆算して4日あるから間に合うと判断、ご本人と助産師の先生に「大丈夫」と告げる。
督脉のど真ん中ではなく左脊際に出現する(右の場合もある)。
陣痛促進穴に円皮鍼を貼る。
▶安産灸 肩井⏩合谷⏩三陰交⏩右至陰尖に知熱灸10壮ずつ施灸。
- 肩井、合谷
堕胎のツボとして江戸期の産科であった中条流で使われていたとされ、気を下げ子宮口を開く作用がある(妊娠初期は禁忌、本来予定日の20日前からすえると超過しない)。
- 三陰交
子宮の収縮を喚起する。
出すは三陰交、止めるは蠡溝と覚えておくと使い勝手がいい。
- 右至陰尖
至陰は第5爪甲根部の角に取るが、右至陰尖は小指の尖端に取る。
『和漢三才図絵』にあるように命門の陽気を鼓舞してくれる。
☑セルフケア 自宅で安産灸のツボにドライヤー灸と暇さえあれば肩井と合谷を自分で指圧するように指導。
治療2回目(1月18日)
入院まで残り3日
☑経過 陣痛はまだ来ないがお腹がよく動くようになったとのこと。
助産師の先生もだいぶ下がってきていると仰る(時間さえあれば毎回付き添ってこられ、寄り添われる姿勢に、医療者としての在るべき姿を学ばせていただいております)。
☑本治法 腎虚証で左然谷を補い、左豊隆に枯に応ずる補中の瀉法。
☑標治法
▶陣痛促進穴の高さを確認するとやはり第5胸椎の左脊際に降りてきている。
円皮鍼を貼付。
▶安産灸 肩井、合谷、三陰交、右至陰尖に知熱灸。
セルフケアを指示して終了。
翌1月19日
入院まで残り2日
午前の臨床中に助産院からの電話が鳴り、緊張が走る。
助産師の先生、陣痛が来て今分娩中だが、微弱のため、助産院まで往診してもらえないかとのこと。
行ってあげたいのは山々だが、予約がビッシリつまっていて行けそうにないので、そこにご主人がいるかを確認するといるとのことなので、陣痛の間隔が狭くなるまで肩井を指圧し続けるように伝えてもらう。
そして1時間後⏩
再び助産院からの電話が鳴る。
無事に出産、母子ともに健やかとのこと✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨
経産婦は陣痛が来たら早いね。
ということでミッション達成。
年に数回、助産院からご依頼をいただくことがありますが、今回も何とか応えることができました。
陣痛促進剤を使うとしんどいらしいので、毎回喜ばれています。
でもまあ、本音を言うとギリギリはヒヤヒヤするので、最低でも臨月に入ったくらいから来ていただけると助かります。
一番いいのは妊娠初期から安産灸をするのが最高です。
午前の臨床を終え、助産院にうかがうと、ご家族も含めみなさんからお礼の言葉をいただきました。
何回聞いても嬉しいですね。
ご本人から、2回目の治療の後すぐに、おしるしがあり、夜には陣痛ぽいのがきて、まだ強くなかったので朝まで待って助産院に向かわれたと、赤ちゃんを抱きながら嬉しそうに話してくれました。
やっぱり助産院でのお産はアットホームでいいですね。
あいさつも程々に、午後の臨床の準備のため助産院をあとにし、治療室に戻りました。
おわりに
もっと楽に臨床したいですが、多少無茶な依頼であっても、現代の名工、伝統工芸士・市原吉博氏の言葉を借りれば、
“安請け合いしてから苦労する。頼まれ事は試され事。仕事の依頼は全て受け、熱意で応える。NOと言えないアーティスト、それが職人。”
付け加えて結果を出す。
ですね。
頼ってくださりありがとうございます。
勉強になりました。
ご出産おめでとうございます。
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