予定日超過と微弱陣痛の症例
10月17日 月曜日
◼︎現在地の陣痛促進穴に円皮鍼を貼付。
■効果判定
脉の和緩、寸関尺の伸び、胃神根の充実より生命力が強化されたことを確認して治療を終える。
10月18日 火曜日
■経過 少しお腹の張りが強くなった。
陣痛促進穴の位置を確認すると定位置まであと8㍉。
■脉診
⚫︎脉状診 やや浮、数、実。
⚫︎比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
■証決定/適応側 腎虚心実証。左適応側。
■治療
⚫︎本治法
左陰谷、尺沢補法。
⚫︎標治法
◼︎安産12穴 肩井、合谷、三陰交、中封、右至陰尖に最適解知熱灸20壮。
◼︎現在地の陣痛促進穴に円皮鍼を貼付。
10月19日 水曜日
■経過 より張りが強くなった。陣痛促進穴がようやく定位置まで降りて来た。
午前中に助産院でエコーをすると赤ちゃんがだいぶ下まで下がって来ているとのこと。
けれども子宮口は全く開いていない。
■脉診
⚫︎脉状診 浮、数、実。
⚫︎比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
■証決定/適応側 腎虚証。左適応側。
■治療
⚫︎本治法 左陰谷、左尺沢に補法。
過去2回は整脉力豊かに主たる変動経絡の生気の虚を補うと、左寸口沈めて心の脉位に邪気実が浮いて来たが、今回は左関上沈めて肝に邪気実が浮いて来た。
肝は陰器を主る。
助産院で診てもらったようにあとは子宮口を開くだけのところまで来た。
七十五難で肝に浮いて来た邪気実を、脉状より虚性の邪と診て、右太衝に堅に応ずる補中の瀉法。
胆経に浮いて来た邪気実を左懸鐘に枯に応ずる補中の瀉法。
⚫︎標治法
◼︎安産12穴 肩井、合谷、三陰交、中封、右至陰尖に最適解知熱灸20壮。
◼︎ようやく定位置に降りて来た本丸の陣痛促進穴に円皮鍼を貼付。
定位置の陣痛促進穴に円皮鍼を貼ると48時間以内に陣痛が来る。
取り敢えずは、希望を叶えるための必要最低限の条件は揃った。
人事を尽くして天命を待つ。
明日の朝までに陣痛が来ること願い最後の治療を終える。
10月20日 木曜日
朝、助産院より一報が入る。
昨夜夜中2時に陣痛が始まり、朝まで自宅で頑張って、今朝から助産院に来ているとのこと。
なのでひとまずは産科に行かなくても良い。微弱陣痛なので本陣痛に至るように鍼灸で手伝ってくれないかとのことなので、お昼休みに助産院にうかがおうと思ったが、陣痛の間隔が緩やかなので来院してもった。
■経過 前回治療後におしるしがあって、夜中2時に陣痛が始まった。
■脉診
⚫︎脉状診 浮、数、実。
⚫︎比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
■証決定/適応側 腎虚証。左適応側。
■治療
⚫︎本治法 左陰谷、左尺沢を整脉力豊かに補うと、ここで遂に右関上沈めて脾の脉位に邪気実が浮いて来た。
古来より予定日超過や微弱陣痛は三陰交を瀉せと言われているが、脾経を切経すると確かにどの要穴よりも三陰交に実的所見がある。
右三陰交に堅に応ずる補中の瀉法。
胆経に浮いて来た虚性の邪を、左懸鐘から枯に応ずる補中の瀉法。
⚫︎標治法
◼︎安産12穴 肩井、合谷、三陰交、中封、右至陰尖に最適解知熱灸20壮。
◼︎陣痛促進穴を確認するとやはり定位置に違いない。
10月20日 木曜日 夜土用 19時13分
診療後、22時00分前に助産院へ往診。
■経過 当院で治療後、助産院に向かったが陣痛が遠のいたので一旦自宅へ戻る。
再び19時00分過ぎより陣痛が始まる。
■診察/診断/治療 分娩室で脉診すると、虚実がハッキリと出ない。
脉の虚実がないということは、本治法をする必要がないということである。
それでも依然微弱陣痛なので、陣痛を継続させるために肩井、合谷、三陰交、中封、右至陰尖に最適解知熱灸20壮。
施灸後再度脉診すると、僅かに虚実が出て来たので、比較脉診をして主証は腎虚証で本治法。
本治法テスターで丁寧に時空弁証して一鍼毎に検証確認しながら、左陰谷、左尺沢を中野鍼法G0.2Cで補い、脾経と胆経に浮いてきた邪をそれぞれ右三陰交から堅に応ずる補中の瀉法、左懸鐘から枯に応ずる補中の瀉法。
脉の和緩、寸関尺の伸び、胃神根の充実より生命力が強化されたことを確認して治療を終える。
この時点で23時00分過ぎ。
時計を見ながら、
②1時00分〜3時00分(肝ー小腸)
③2時00分〜3時00分
④3時00分〜5時00分(肺ー膀胱)
⑤5時00分〜7時00分(大腸ー腎)
その結果、③2時00分〜3時00分で最も動いて最も良くなる。
③以外の①〜⑤は子午陰陽時間、③は陰中の太陰である腎から陰中の少陽である肝に移行する時間帯、節気でいうと土用に当たる。
土剋水で、土用の影響を最も受けるのは腎である。
良い影響を受ければ陣痛がピークを迎えるだろうし、良くない影響を受ければ陣痛が遠のくかもしれない。
今夜19時00分過ぎから再び陣痛が始まったことを考えると、良い影響を受けて陣痛を後押ししてくれることを期待して、
「今の治療は助走だと思ってください。
これから段々と間隔が狭まってくると思います。
最も影響力が大きくなるのは2時00分〜3時00分です。
10月21日 金曜日
参考文献
脈経・平妊娠胎動血分水分吐下腹痛証第二
医心方・妊婦脈図月禁法第一
周産期鍼灸について
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